2023年3月
エアコンの設定温度と消費電力の関係について、実際にはどんな関係があるのか知りたく、計測して調べてみました。
エアコンは家庭用のもので、消費電力の計測には「DEMS(省エネでまこん)」を、温度の計測には(「おんどとり」、室内及び室外に設置)を使用し、各1分単位で測りました。
今は冬で「暖房運転」になりますが、朝のほぼ同じ時間帯、部屋の熱源や人の出入りなど、ほぼ同じ条件で1月から3月にかけて計測したものです。
まとめ
・朝一番など運転開始時の消費電力は600W~800W(運転開始1時間まで)
・消費電力量は室内温度と外気温の差に比例(運転開始1時間まで)
・一定時間が経過しても、室内温度と設定温度は一致するとは限らない
(以上、今回の条件に於いて 暖房能力3.6kW,設定温度等は本文内参照)
間取り、エアコン仕様、計測について
計測を行った部屋の間取り、エアコンの仕様、計測器等は下図を参照ください。
エアコンの消費電力と室内温度
エアコン消費電力の計測
上述の環境でエアコンの消費電力と温度を1月から3月にかけて計測しました。
エアコンの設定は以下のとおりです。
- 暖房モード(自動モードではない)で運転。運転時間は朝6時~8時ころ
- 設定温度は17℃(ただし、運転開始から60分間は+2℃(19℃設定)で運転される仕様)
- 風量は弱
- 室内環境は毎回ほぼ同じ
以下に計測結果を3例示しますが、グラフにおいて電力量・室内温度は第1軸、瞬時電力は第2軸。室内温度は「温度計2」のデータを使用。
電力量と電力の見方は、2月23日のグラフで説明すると、
8時前付近の瞬時電力の指示値はおよそ「300W」、
したがって、1時間あたり「300Wh」となります。
ところがグラフは1分あたりの電力量の目盛り表示なので、
300Wh÷60min=5Wh/minとなります。
第1軸をみると「5Wh/min」と読み取られ、同じ結果となります。
ちなみに電力量はオレンジ色グラフで囲まれた「面積」が相当します。
2月22日:外気温▲0.4℃
- 6時25分ころ運転開始、その時の室温は、4.7℃
- 室温17.7℃に達したとき、消費電力は一段回ギヤダウン
- 60分経過したら、一旦OFF。この時温度は19.5℃
- 温度が16℃近くまで下降したら再び運転開始
- しばらくすると、6Wh/minの状態で推移。この時の温度は16℃程度
- 8時15分ころにエアコン止め。室温は急速に下がる
2月23日: 外気温度が3.1℃と前日よりもやや高い。したがって、運転開始時の室温もやや高い
- 6時23分ころ運転開始。その時の室温は、7.5℃
- 室温17.6℃に達したとき、消費電力は一段回ギヤダウ
- 60分経過したら、一旦OFF。この時温度は20.1℃
- 次に温度が17℃近くまで下降したら再び運転開始
- しばらくすると、5Wh/minの状態で推移。この時の温度は18℃付近
- 8時03分ころにエアコン止め。室温は急速に下がる
2月24日:外気温度が5.0℃。室温は前日よりも8.3℃とさらに高い
- 6時30分ころ運転開始、その時の室温は、8.3℃
- 室温16.8℃に達したとき、消費電力はかなりギヤダウン
- 60分経過したら、一旦OFF。この時温度は20.5℃
- 次に温度が18℃近くまで下降したら再び運転開始
- 温度17.3℃~18.4℃をサイクリックに繰り返す。
- 8時20分ころにエアコン止め。室温は急速に下がる。ただ、下降速度は前述の2例より緩やか
見てのとおり同じ設定、ほぼ同じ室内環境にも関わらず、連続する3日間にわたり計測した電力量や室内温度の状況は微妙に異なっています。
ただ3例とも大まかには同じ動きで、運転開始5分程度後に電力は最大となり、温度も急上昇。ある温度に達したら消費電力は徐々に低下、そこからは温度は緩やかに上昇。
60分経過すると一旦消費電力は最小(このエアコンの仕様)となり、この間温度は2~3℃下がる(設定温度は17℃のため、その温度まで下がるのを待っている状態)。そして再び動き出すが電力は直前よりも少なめで運転され、16℃~18℃の範囲で室内温度は制御される。
そこで、電力量(運転後1時間の電力量)を比較してみたところ、以下のとおり大きく異なっていました。
()内数値は2月24日のデータを基準とした割合です。
- 2月22日 790Wh(138%)
- 2月23日 631Wh(110%)
- 2月24日 569Wh(100%)
この違いは何でしょうか? 設定温度は毎回同じであり、運転開始前の室温や外気温度と関係がありそうです。
設定温度=室内温度?
設定温度17℃、毎回ほぼ同じ条件で、3日間連続で運転し、計測データを整理したところ、室内温度に関して意外な点に気づきました。
- まず、最初の60分の「設定温度+2℃」運転モードにおいて、最大温度はおおよそ60分経過直前に発生するが、その温度は毎回異なり±0.5℃ほどばらつきがある
- その後、安定した動作の時の室内温度も毎回異なっており,その幅±1.2℃
- 傾向として、外気温が高いと+方向。外気温が高いということは、設定温度との温度差が小さいことを意味
つまり、設定温度と安定時の室内温度はやや異なるということ。そこを認識しておく必要があるようです。例えば、今日とはいつもより寒く感じるとか暑く感じるとか、また個人差もあるため、設定温度を基準とするではなく、温度計を目安にするのが良いかと思います。選定に当たっては感度や応答性の良い温度計を数か所分散設置するのが望ましいでしょう。
そして状況に併せ、温度設定を下げる上げるなどの調整をすると良いでしょう。下げれば省エネになりますし、上げれば快適になります。そもそも、エアコン(暖房)は寒さ対策のために用いるもので、寒いと感じたら設定温度を上げるのをためらう必要はないと思います。ただ、寒いと感じる時に「霜取り」があります。この動作は理解しておく必要があります。
温度(差)と消費電力の関係は?
前述の計測結果をもとに、エアコンの消費電力と温度の関係はどうなのか述べますが、温度は設定温度ではなく、実際の室温と比較すると関係性が保たれるようです。そのあたりを検証してみました。
表1について
表1は、「エアコンの運転開始から60分の間」の電力量や温度について、6件ほど抽出・整理したものです。
繰り返しになりますが、6件とも以下の条件下での運転です。
- 暖房モード(自動モードではない)で運転。時間は朝、6時過ぎ~8時ころの間
- 設定温度は17℃(ただし、運転開始から60分間は+2℃(19℃設定)で運転される仕様)
- 風量は弱
- 室内環境は毎回ほぼ同じ
表1において、項目の意味するところは図2を参照してください。
この表で、「電力量」と「温度差(cーa)」の相関を調べてみました。次の図1です。
図1について
見てのとおり、エアコンの「消費電力量」と「温度差(cーa)」の間には強い相関があります。
つまり、「エアコン運転時の外気温度と室内温度の差」はエアコン消費エネルギーに比例すると言うことです。
そこで、図中の式に温度差を入力し、電力量を求めたところ次のようになりました。
- 温度差17℃(例えば、到達温度19℃、外気温度2℃)のとき、630Wh
- 温度差18℃(例えば、到達温度20℃、外気温度2℃)のとき、679Wh
この試算によれば、室外温度が同じとき到達温度(≒設定温度)が1℃下がると、8%ほど消費電力が下がります。
ただし、あくまでも、前述の条件によります。ちなみに、室内温度との差も強い相関がありますが、外気温度差の方がより強く現れました。
霜取り動作
「霜取り運転」が発生した時の消費電力と室温はどのような関係にあるのでしょうか?
また、「霜取り運転」はどのようなときに行われるのでしょうか?
「エアコンの消費電力」の計測の際、何度か発生しましたのでここで紹介します。
まず、「霜取り運転とは」について、説明書には次のように書かれています。
外気温が低く湿度が高いときに暖房・除湿・ランド リー運転を行うと、室外ユニットに霜が付き、暖房 能力が低下します。このようなときはマイコンによ り、霜取り運転が始まり、暖房・除湿・ランドリー 運転がいったん止まります( 室内・外ファンが停止し ます)。元の運転に戻るまでに約4 ~ 15 分程度の時間がかかります。霜取り運転中は運転ランプ( 緑) が おそい点滅をします
そこで、「霜取り運転」が発生した2例、1つは「暖房運転モード」、もう1つは「自動運転モード」における計測データを紹介します。
ちなみに、運転開始時に外気温度がある温度以下であったら、必ず「霜取り運転」が行われました。
データ1 16℃設定(最初の60分間は18℃設定(16℃+2℃)で動作。その後16℃設定で制御される)
- 運転49分後に霜取り運転開始。この時の室温は17.9℃
- 霜取り時間は、6分間。この間の消費電力量は52Wh
- 霜取り中、室温は11.3℃(▲6.6℃)まで下降
- 結局、室温が設定温度(16℃)になるまで、19分用した
データ2 自動運転(23℃設定で動作)
- 運転66分後に霜取り運転開始。この時の室温は21.0℃
- 霜取り期間は、5分間。この間の消費電力量は42Wh
- 霜取り中、室温は14.9℃(▲6.1℃)まで下降。この間9分
- その後7時46分ころに「自動運転モード」を変更したため、温度は途中から下降
「霜取り運転」に入ると、暖房の働きが止まり、電力は霜取りに消費されます。この間室温が下がり寒く感じますがやがて復帰します。
計測データを見ると、室温が元の温度に復帰するまで約20分要しており、そこを認識しておくことが大事です。この2つの例では、室内温度は霜取り開始直前の温度から6℃~7℃下がるため寒く感じました。
ただ、霜取りが働くとこのような状態になることを知ってれば納得できそうです。
今回は以上になりますが、今後次のような点も適宜紹介していきます。
今後掲載予定のテーマ
エアコン停止後の室温の変化(編集中)
下のグラフは今回の一連の計測データ(暖房)の一部について、エアコン停止後の室温の変化を1分ごとにプロットしたものです。凡例の()内は、エアコン停止時の外気温度です。このグラフより、次のようなことがわかります。
- エアコン停止10分ほど経過すると室内温度は3℃~4℃下がる
- 10分程度ではそれほど下がらないため、少し早めにエアコンを止めることが可能であれば、わずかながら省エネにつながる。その効果は、
300W✕10分=50Wh
300W:安定運転時の平均的な消費電力
状況に合わせて早めに止めればそれだけ省エネになります。
室内温度(床面とエアコン設置付近の2か所)(編集中)
左のグラフは、ある日の暖房運転の消費電力と室内温度の関係を示したグラフです。
温度計(天井付近)は、床面から1.8mに設置、温度計(床面付近)は、床面から0.6mに設置しました。配置平面図はこちらをご覧ください。
エアコンの消費電力量は第2軸で確認できます。③の部分はエアコン停止後の様子ですが、最後に発生している電力(13Wh程度)は霜取り動作に入ったことを示しています。
①の部分(エアコン運転開始数分後)
- エアコン運転開始時は、天井付近の温度計の方が床面付近の温度計よりやや低い。
- 温度が上昇すると、温められた空気は軽くなり、対流により天井部へ向かい滞留する。その結果、天井の方が床面よりやや高くなる。
②の部分(霜取り)
- 外気温が低かったため(-0.5℃)、運転開始70分経過した頃、「霜取り」運転に入った。
- 「霜取り」中には暖房動作は止まる(送風も停止)。そのため天井付近の空気の温度は下がり、密度が小さくなって下降し床面部の空気と混ざり、そのうち床面部と同じ温度になった模様。
③の部分(エアコン停止)
- エアコン停止直後までは天井付近の温度の方が高いが、時間がたてばやがて逆転し、天井付近の温度が床面付近より低くなる。要因の一つとして、天井は水平面のため空気との接触割合が大きく、それだけ放熱効果も大きいためであろう。
定常運転での温度と消費電力の関係
運転開始2時間までの消費電力
概要;運転開始1時間で2/3,残り1時間で1/3の割合。いわゆる外出時は止めるかそのまま運転継続するかの判断
概要:天井付近の方が温度が高い。天井(水平面)の断熱は重要
隣室の温度変化
ふすまにより間仕切りされた隣室の温度はどの程度か調べるため、温度計3を隣室に移動し温度変化を記録しました。温度計は床面から0.6m程度、ふすまから0.3m程度に置きました。
ある日における、エアコン運転開始1時間後の温度は次のとおりで、0.5℃だけ上昇しました。
- エアコンのある部屋 9.6℃→20.0℃
- 温度計3 8.1℃→8.6℃
ちなみに、この間外気温は5.4℃で一定でした。